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反省する使い魔! 第三話「報いか試練か反省か」 出所当日、オレは家に帰ろうと駅に向かい電車に乗ろうとしたところを いきなりルイズとか言う奴のおかげでわけのわからねーところに連れてこられちまった… 神様よぅ、あんたはまだオレを許してくれねーわけか?恨んでるわけか? ええおい?三年前、確かにオレは形兆を殺した、盗みもやった なのになんでだ?オレは三年間、刑務所に入って反省はした筈だ。 実際今だって、形兆を殺したことをオレは後悔しているんだぜぇ… あいつは気に入らなかったがオレなんかと違いかわいそーな奴だった。 形兆は自分の父親を救ってやりたいが為に弓と矢を使ってきたんだ。 それに比べオレはどうだぁ?ええ?当時の俺はただ日頃のつまらねえ 繰り返しをするだけの社会に不満を感じ刺激的の人生を求めるがために 弓と矢を奪い…使っていたんだ。 虹村形兆という男を殺してまで……最低だな、オレ 都合のいい話かもしれないが音石は刑務所に入ってから ゆっくりと時間を掛け自分の行いを思い返していくことにより 自分がどれだけ酷い事をしたのか自覚することができていた… そしてそれを自覚し反省したが上で彼は今日出所した… そう!自分の罪を受け入れたからこそ彼は杜王町に戻る覚悟があったのだ!! 東方仗助、虹村億泰、広瀬康一、岸辺露伴などといった 「黄金の精神」を持つ若者達と向き合う覚悟が彼にはあったのだ!! (杜王町で億泰に会ったらまたぶん殴られるのを覚悟してたんだがなぁ~…) 「ちょっと!アンタちゃんと聞いてんの!?」 「ん?ああワリィ…考え事してた」 「ッ~~~~!!あんたねぇ~!」 「悪かったって、俺だっていきなりで結構混乱してんだよ、 サモン・サーヴァントだっけ?その使い魔っつーのを召喚する儀式で オレを召喚したってことはちゃんと理解してるぜ」 「そう!そしてここは!」 「ハルケギニアっつー世界の神聖なるトリステイン魔法学院……だろ?」 「…なによあんた…やっぱ知らないとか言って実は知ってるんじゃあ…」 「そんなんじゃねーよ、ただ単に記憶力がいいだけだ」 その言葉にルイズがふーんと言って目を細めている。 先程のハルケギニアを知らないと言う音石の質問を 自分をバカにしてるんじゃないかとまだ疑っているようだ。 「でも、最後の所だけ聞きそびれちまったんだ、なんだっけ…使い魔の…えーと…」 「使い魔の役目よ」 「そうそうそれだ、そこんとこよくわかんねーんだよ、もう一回頼むわ」 「たくっ、仕方が無いわね…いい?使い魔って言うのは 主人を守り、手となり足となり一生主人に仕える、それが使い魔よ!」 「なるほど……ん!?ちょっと待て…一生?今、一生って言ったのか!?」 「そう一生よ、当たり前じゃない」 ハァ~~~~~~~~~~~ッと音石は深くため息をついた。 当然だろう、いきなり呼び出され一生使えろなど無理な話である。 「なによそのため息、何か不満があるわけ!」 「逆に聞くがこんな状況にされて不満を感じねーって言うのもどうかと思うぜ…」 「う……、うるさいわね!私だってまさか人間が召喚されるなんて 思っても見なかったもの!仕方ないでしょう!」 「随分といい加減な召喚だなァ、おい…」 「あんた!神聖なるサモン・サーヴァントを侮辱するつもり!?」 「そうは言ってねーよ…なあ、悪いことは言わねぇから俺を送り返してくれねーか?」 「無理よ」 「即答かよッ!!」 「だって、使い魔を送り返す魔法なんて聞いた事ないもの、仕方が無いでしょう」 「改めて言うがマジでいい加減だなァおい!」 「うるさいうるさい!私だって本当はドラゴンとそういうのを期待してたのよ!? それなのにアンタみたいな平民を召喚した私の気持ちがわかる!?」 「オレ魔法使いじゃねーからわかんねーよ」 「メイジよ!!」 「はいはい………!」 その時音石は気付いた、ルイズが涙目になっているのを… それと同時に昼間のことを思い出す彼女が自分という平民を 召喚したことにより周りからバカにされたあの一部始終を… 「………はァッ」 「なによそのため息!まだ文句あるの!?」 「……なるよ…」 「大体アンタ平民の癖に生意気……え?」 「なにマヌケな顔してんだよ…、なってやるよ…その使い魔とかによォ~」 「使い魔になるって……、ほ、ホント!?ほんとにほんと!?」 「ホントにホントだ、ただし帰る手段が見つかるまでだがな…」 「そ、そう…わ、わかればいいのよ!わかれば!」 (涙目で威張られてもな…それと無い胸で胸を張るな) そして音石は壁にもたれ掛かり、ルイズはベットに腰を下ろした。 「そう言えばあんた異世界からどうとかって言ってたけど異世界ってどういうこと?」 「言葉通りの意味だよ、このハルケギニアとは異なる世界から呼び出されたってこった」 「信じられないわね…、大体アンタなんでハルケギニアが異世界だって断言できるのよ?」 「簡単だ、文化が違いすぎるからな…そしてなにより」 そういうと音石は窓を見た 「なにより…なによ?」 「俺がいた世界には月は1つしかねーよ」 「はあっ!?なにそれ!?月が1つってどんな世界よ!?」 「オレからしたら月が2つあんのがどんな世界だって話だがな…」 「…やっぱり信じられないわね、わたしをバカにしてるんじゃないの?」 「まあ、好きにしな…信じようが信じなかろうがおまえの勝手だ」 「お前って…私はアンタの主人よ!ご主人様と呼びなさい!」 (めんどくせぇ……しかし、まあ退屈はしなさそうじゃねーか) その時、窓を見ながら音石の顔は薄く笑っていた。 「それじゃあ、これ明日になったら洗濯しといて…」 「ああ、悪い…せっかくだしちょっとそこらへん散歩してくるわ」 「はっ!?え、ちょっと…あんた」【バタンッ】 「行っちゃった…、もう!なんなのよアイツ!!いきなり変な楽器で演奏するし 異世界からとか訳わからないこと言うし、散々文句言ってたくせに急に素直になるし…」 その時、ルイズはハッと気づいた。 「も、もしかしたらアイツ、散歩とか言って逃げる気じゃあ…」 そんな何気ないマイナス思考な一言がルイズの顔色を青く変えた。 (も、もし召喚初日に使い魔に逃げられちゃったら…みんなになんて言われるか …い、いいえ、それだけじゃないわ!実家にいるお父様やお姉様になにされるか… こ、こ、こ、こうしちゃいられないわ!直ぐにアイツを連れ戻さないと!!) バタンッ!と甲高い音が廊下に響き渡らせ、ルイズは階段を駆け下りた。 現在音石も階段を駆け下りながらいろいろ考えていた。 異世界か…、出所していきなりとんでもねーゴタゴタに巻き込まれちまったが 悩んでてもしょうがねぇ、前向きに行くとするか… そうだぜ音石明、逆に考えるんだ 異常な事に巻き込まれているが逆に言えばオレはとても貴重な体験をしている。 よし、これでいこう! そして階段を降りると廊下に突き当たった。そしてその廊下には 金髪のいかにもナルシストを思わせるキザっぽい少年と 茶色のマントをしたおとなしそうな少女が楽しそうに会話していた。 「ケティ…君はやはりいつ見ても美しいよ…まるで女神のようだ」 「まあ、ギーシュ様、本当ですか?」 「もちろんだともケティ、僕が君にウソをつくわけ無いじゃないか」 「ギーシュ様……」 「ケティ……」 「あー…、お楽しみのところ悪いんだがちょっといいか?」 「うわァッ!?」「きゃあッ!!!」 二人とも音石の存在に気づいていなかったのか 突然声をかけられたため予想以上に驚き、声が重なっていた。 少女に関しては驚いた勢いで床に倒れ尻餅をついている。 「ああ、ワリィ…驚かせるつもりは無かったんだが…大丈夫かよ?」 「イタタタ…」 「ケティ!ちょっと君ぃ、横からいきなり口出ししてくるなんて無礼だぞ!」 ギーシュという少年が音石をキッ!と睨む。 ふと、ギーシュはその男に見覚えがあるのを思い出した。 「君は…たしか、ゼロのルイズが呼び出した平民か?」 「覚えてもらっているとは光栄じゃねーか」 すると尻餅をついているケティという少女が意外そうな顔で音石を見る。 「この人が!?一年の間でも有名ですよ!……ッ、あいたた」 「おいおい、足でも挫いたんじゃねーのか?立てるか?ほら……よっと!」 「え!?…あ、ちょ…」 「なッ!?……な、な…」 すると音石はケティの手を取り、彼女を引っ張り立たした、 ギーシュは音石の予想外の行動に唖然している。 「なんともねーか?」 「あ…いえ、あ、ありがとう…ございます…」 まさかいきなり手を掴まれるとは思ってもいなかったのか ケティは若干顔を赤くしている。 「おい、君!本当に無礼な平民だな!!平民が貴族の手に気安く触れるなど 立場をわきまえたまえ!!」 「いえ、いいですギーシュ様!私は別に気にしてませんから!」 勢い余るギーシュをケティが静止をかける。 「だから悪かったって、ただちょっと道を尋ねたいんだが…外に行くにはあの階段を降りればいいのか?」 そう言って音石は下に通じているであろう下り階段を指差した。 ギーシュは興醒めといわんばかりに薔薇を顔に寄せる。 「ふん、愛しのケティに免じて許してやろう…、ああ、その通りだよ」 「そいつはどうも…」 そう言うと音石は何事も無かったかのように階段を下りていった。 「たくっ…大丈夫かいケティ?」 「ええ、私は大丈夫です」 すると音石がやってきた登り階段から足音が聞こえてくるのに気づき ギーシュとケティは何事かと階段を覗き込んだ、そこからやって来たのは… 「おや?ルイズじゃないか、どうしたんだいそんなに慌てて…」 「ギーシュ!私の使い魔見なかった!?」 「君の使い魔?彼ならさっき階段から降りていったが……、おいおいルイズ まさか君は使い魔に逃げられたのか?フッ、まったく、使い魔もロクに扱えないとは さすがは『ゼロのルイズ』だな、期待は裏切らないでくれるよ」 「うるさいわよギーシュ!もう、あいつ変に足が速いんだから…ギーシュ!ちょっと 捕まえるの手伝って!!」 「やれやれ仕方がないな、いくらゼロとは言え女性の頼みだ すまないケティ、すぐに戻るよ」 「あ!ぎ、ギーシュ様ぁ!!」 下り階段に向かうルイズの後をギーシュが続いた。 階段を下り室内噴水広場にでるとそこにはルイズが良く知る褐色肌の女性と 小柄で眼鏡をかけた水色の髪をした少女がいた。 「あら、ルイズにギーシュじゃない、一体どうしたのよそんなに慌てて?」 「キュルケ!私の使い魔見なかった!?」 「ああ、顔に大きな傷のある彼なら向こうの階段に降りていくのを見かけたけど?」 「ギーシュ、行くわよ!」 「やれやれ…」『タタタタタ……』 「なんだかおもしろそうねぇ、タバサ!行ってみましょう!」 タバサと呼ばれる少女は読んでる本を閉じ、無言のままキュルケの後に続いた。 「改めて見てみるとマジで異世界っつーことが実感できるな」 音石は学院の外に出てみると視界に入るものすべてが元の自分の世界とは かけ離れている事を実感した。 夜空に浮かぶ2つの月、見たことも無い巨大な城、使い魔を引き連れているメイジ どれもこれもがファンタジーやメルヘンの世界だった。 「おや?君は…」 「ん?」 すると不意に声をかけられ音石は顔を向けると そこにはいたのは昼間の禿げ頭の男だった。 「あんた…確か昼間の」 「コルベールです、この魔法学院で教師を務めています」 「あ~どうも、オレ音石明っつーもんです」 「オトイシアキラ?変わった名前だね」 「(そりゃ変わってるだろーよ…)あのー、俺になんか用ッスか?」 「おお、そうだった!なに…君の『ルーン』をスケッチするのをうっかり忘れていてね 今からミス・ヴァリエールの部屋に伺おうとしていたのだが手間が省けたよ」 「『ルーン』?なんスかソレ?」 「『ルーン』を知らないのかい?使い魔としての紋章だよ」 「紋章」という言葉に音石は心当たりがあった。 「あ!もしかして左手にあるこいつッスか?さっきから気になっていたんスけど…」 「おお!それだよそれ!…ふむ、珍しい『ルーン』だな、後で図書館で調べてみよう ところでオトイシ君、さっきから気になっているのだが…」 「…?…なんスか?」 「君がぶら下げているソレは…楽器かなんかかい?」 それを聞いた瞬間、音石は納得した。 なるほど、確かにこの世界は俺らの世界で言えば中世ヨーロッパあたりだからな… ギターがないのは当たり前か…、楽器はあるみてーだが良くてもヴァイオリンあたりだな。 「こいつはギターッス」 「ギター?」 「オレの故郷にある楽器みたいなもんッスよ」 「民族楽器みたいなものかい?」 (民族楽器って…このハゲ、オレをなんだと思ってんだぁ?…) 「ふむ…実に興味深いな、よければまた今度 演奏してみてくれないか?今夜はさすがにもう遅いが…」 「はぁ~、わかりました……って、うおおッ!!?」 「なっ!?オ、オトイシ君!?」 なんと突然、音石の体が宙に浮き始めた! 「やれやれ、貴族の手をここまで煩わせるとはとは…、終わったよミス・ヴァリエール」 「助かったわギーシュ」 そこにいたのはルイズとギーシュ、そして面白半分でついてきたキュルケ そしてそのキュルケについてきたタバサであった。 「お、おい!一体なんのつまりだァコラッ!?降ろしやがれ!」 「うっさいわね!あんたがいきなりどっか行くからじゃない!」 「だから散歩だって…」 「嘘ッ!!そんなこと言って逃げる気だったんでしょう!?」 「なんでそうなんだよ!?」 「あっはっはっは、さすが『ゼロのルイズ』ね!使い魔に逃げられるなんて!」 「黙りなさいキュルケ!!」 「だから散歩だって言ってんだろーがぁ!誤解だ!さっさと降ろせぇ!!」 「彼の言うとおりだ、ミスタ・グラモン…降ろしてあげなさい」 その日頃聞き慣れた声がコルベールだと気付き それを最初に驚いたのはギーシュだった。 「コ、コ、コ、コルベール先生!?」 キュルケも「やっば…」と小さく呟いたが その一方でタバサは本を読んだまま動かないでいる。 しかしルイズは… 「先生!あいつは使い魔のくせに逃げ出そうとしたんですよ!」 「それは何かの誤解じゃないのかい?落ち着きたまえミス・ヴァリエール 彼とはさっきから一緒にいたがそんな素振りは全くありませんでしたよ?」 「で…でも、勝手にいなくなる使い魔なんて…」 「ミス・ヴァリエール…確かに彼は使い魔ではあるが人間だ 人間である以上、自分で行動するのは当たり前だろう? …それとミスタ・グラモン、いい加減降ろしてあげなさい」 「あ!は、はい!」 【ドサッ!】「いってぇ~~…」 「わかりましたか?ミス・ヴァリエール」 「…はい」 「よろしい…ではみなさん、私は部屋に戻ります 明日も授業がありますからくれぐれも寝坊しないように…」 コルベールはそう言うとその場を後にし 続いてキュルケ、ギーシュ、タバサも続いてその場を後にした。 ルイズと音石もその場を去り部屋に戻ってきた、 「おい…」 「……………」 「今更どうこう言うつもりはねーがよー…お前なに焦ってんだよ?」 「……あんたには…関係ないでしょう…」 そう言うとルイズは制服のままベッドに入り込んだ。 「おい待てコラ!オレはどこで寝ればいいんだァ!?」 「そこの藁の上」 「………」 (ないよりは…マシだな…) 音石は自分に言い聞かせ藁の上に腰をかけゆっくりと 眠りに付いた…。 To Be Continued →
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ある日、何者かに『矢』で射抜かれ、その身に発現した超能力、『スタンド』! 一体誰が?何のために?まともな感覚を持っているなら疑問は次から次へと湧いてくるはずだが、彼―――間田敏和の心中は、『この不思議な能力をどうやって有効活用するか?』という考えで満たされていたッ! せっかく普通の人間には無い能力を手に入れたのだ。他の奴らよりもっと楽しく自由に、実りのある人生を送りたいではないか! そう思った彼は、さっそく自らのスタンド―――『サーフィス』で片思いだった順子をコピーし、好き放題してやろうと自室へ連れ込んだのであるが・・・・・。 バッチィィ―――z___ン! 今まで思い描いてきたあんなことやこんなことを実現できるという喜びに、すっかり緩んでいた間田の顔面を襲ったのは、他でもない、サーフィス順子が放った平手打ちだった!そのあまりの威力に間田は吹っ飛ばされ、部屋の隅に無様な格好で転がる。 そんな間田に、今度はサーフィス順子の怒鳴り声が襲い掛かる。 「間田君っ!貴方ねえ・・・どんなことしてるか、わかってるの!?」 「は、えっ?」 突然のことに、ブン殴られた頬を押さえ、涙目になりながら返事を返すことしかできない間田。サーフィス順子は容赦なく、彼に罵声の数々を浴びせる。 「女の子を無理やり部屋に連れ込んで、こんな仕打ち・・・・貴方は男として最低よッ!」 「前から思ってたけど、こんなに陰険で卑怯な手段を使うなんて・・・・・何で貴方は、そんな手段を使おうとしかしないのッ!?」 「気に入らないことはすぐに暴力や卑怯な手を使って解決しようとして・・・!そんなの、人間としてクズだわ!」 「知ってるのよ!貴方が授業中にキン○マいじってるの!学校まできて何キモいことやってんのよ!!」 「大体その髪型はなんなワケ!?頭にエチゼンクラゲ乗っけてるみたいじゃない!カッコイイとでも思ってんの!?」 「貴方みたいなヤツを人間として認められるわけないわ!貴方はカスよ!ゴミ以下よ、ゴミ!」 「ううッ!・・・グググ・・・・クキィーッ!!」 スタープラチナのラッシュもビックリなほど、隙無く連打される言葉というパンチの応酬! あまりの悔しさに――――予想以上に自分が順子に嫌われているというショックもでかかったが――――間田は、その場に卒倒してしまったのである! 数時間後。 気絶から覚めた間田は、サーフィス順子から浴びせられた言葉を反芻していた。 サーフィスがコピーした偽者とはいえ、このスタンドは相手の外見、性格、記憶まで完全にコピーする。たとえ偽者とはいえ、 あれらの言葉は常日頃、順子が彼に対して思っていたことなのだ。 後半はほとんどただの罵倒だったが・・・・・・大きな目を潤ませ、彼女が浴びせた言葉には、間田自身も心当たりがあった。 些細なことで喧嘩をした友人に、一生心に残ってしまうような傷を与えてしまったこともある。 気に入らない相手に陰湿な手段を使って攻撃したこともある。 ――――考えてみれば、俺の今までの人生は、『卑怯』という2文字に塗りつぶされていた。 間田は考える。なぜ自分は、音石明に協力して承太郎を町から追い出そうとし、最後には殺そうとまでしたのだろうか。 承太郎が気に入らなかったから?己のスタンドを誇示したかったから? いや、違う。 『音石明が怖かったから』・・・・ただそれだけのことだ。電撃をまとい、電気の存在するあらゆる場所に現れる彼のスタンド『レッド・ホット・チリペッパー』は、 小心者の間田に恐怖心を植え付けるには充分すぎる力を持っていた。 間田は音石明に従った。それこそ、不良に媚びへつらう使い走りのごとく。彼の命令どおり、何の関係も無かった1年生の仗助と康一に危害を加え、承太郎を抹殺しようとした。 もっとも、その命令は失敗に終わり、サーフィスは破壊され、間田は自分が痛めつけた一般人の男2人にコテンパンにやられてしまったのであるが・・・。 間田は考える。『生き方を変えよう』と。 『改心した』などと白々しいことをいうつもりは無い。自分はサーフィスの能力を悪用し、多くの人を傷つけてきたのだから。 だが、彼はどうしても変えたかった。いや、『変わりたかった』のだ。 卑怯で陰険で・・・・小心者だった過去の自分にオサラバし――――優しくて、タフで、頼りになる男に。 うわっ面の使い魔 「ったく、せっかく決意したってのに・・・・このままじゃ張り合いがねーよなぁ」 学生服を着込んだ男が不満げに呟きながら道を歩いていた。 だらしなく伸びた黒髪に、痩せた体。俗に言う『オタク』という人種の外見だった。 彼の名は間田敏和。ぶどうヶ丘高校に通う3年生である。 『優しくて、タフで、頼りになる男』になろうと決めてから早一ヶ月。結論から言うと、彼は全然変わっていなかった。 単に自分の努力が足らないだけとも言えるのだが、間田は何故か周囲のせいにしていた。 「なんつーかなぁ・・・冒険が足りねーんだよ、冒険が」 曰く、炎髪灼眼のツンデレ美少女と共に紅世の徒と戦ってみたいだの、死神代行になって開放とかしてみたいだの。 そんなことで自分が変われると思っている時点で彼は立派な中二病なのだが、平和になった杜王町にそんな冒険の気配はナッシングだった。 「吉良吉影みたいなのがまた来てくれれば、なんて言わねえけどよぉ~。血湧き肉踊るような戦いの日々に身を委ねてみたいぜ・・・ん?」 そう言いながら、彼は一軒の書店の前で足を止めた。 「おっと、いけねー。今日は『キラ☆スタ』の発売日だったんだ。買ってくか」 愛読書の最新巻が発売されることを思い出し、進路を変えた直後。 突如、眼前に光り輝く鏡のようなものが現れ、猛スピードでこちらに迫ってきたのだ! 「な・・・何だよこりゃあ!う、うわぁーッ!!」 鏡はあっという間に間田の身体を飲み込み、徐々に小さくなり・・・消えていく。 ―――スタンド使い、間田敏和。彼の冒険はここから始まる―――。
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「ドラァァーッ」 「げうッ」 鞭をふりまわす相手には近寄りたくない 女を殴るのも気がすすまない 仗助は顔をしたたか打ちすえた一発に耐え ルイズの右肩を全力で突き飛ばし室外へ逃げた ケガをしていないか心配にはなるが、かまっているヒマはない そして部屋を出るついでにドアを壊し 「なおす」 彼の不思議な力は他のモノと意図的に混じり合わせ癒着させることもできる それを利用してルイズの部屋を即席の座敷牢に仕立て上げてしまったのだッ ドンッ ドンッ 「何これ、どうなって? 開けなさいッ」 「ザマーミロだぜ つきあいきれっかっつーの」 言いつつ仗助は改めて回りを見る どうもルイズの部屋と同じようなのがズラリと並んでいるらしい もしかしてここは「寮」か何かみたいなものなのか? そういえば、亀に引き込まれて「ここ」に出たときに見たっけか 同じ服装をしたやつらがズラリと並んでいるのを アレは制服ってことか! (つまり…なんだぁ、おいッ) 推論が次第に形になってきた いきなりここに出てきたオレ ドラクエとかなんとか、それっぽい魔法を使うあいつら オレはヤツらに「なにか」されたわけか …と、なるとッ 得体のしれない力を持った組織とか何かに誘拐された? (ドコの十週打ち切りマンガだっつーの) 自分で考えてアホらしかった 一蹴しかけて…自分で自分の考えに目ン玉をムイたッ (だけど待てッ 「使い魔」だとか、「ご主人様」だとか ツジツマが合うじゃあねーか、そう考えりゃあよぉぉ~) つまり、そーいうモノにするために誘拐したということになるッ というかもう、そうとでも考えなければ何もかもわかんね―――ッ!! とにかく、あのルイズとかいうピンク髪が今ギャンギャン騒いでいるのだ このままここでジッとしていたらマズイッ 仗助くんピンチッ (だがよぉ~ ただ逃げるだけじゃダメだぜ、多分…) このままインディ・ジョーンズのようにサッソウと逃げ出していけると考えるほど ノンキこいてはいられないのである 右も左もわからないまま突っ走ってもアッという間につかまるのがオチだ 必要なものは「情報」である そして、それを得るため 今頼れそうなアテは 「シエスタ、っつったな…あのメイドさんしかいねぇよなぁ~」 すくなくともあのメイドは仗助を人間扱いしていたのである それどころか、仗助の不思議パワーを指して「貴族」だと まだ遠くには行っていないはずだった 一刻も早くつかまえ、聞きたいこと全部聞き出してしまわなければならない それこそ、あのハゲチャビンのような人間と出くわす前に、だッ 「帰れと言われたんなら『上』に上っていく可能性は…低いぜ 使用人なんだからな」 幸いすぐに見つかった階段を注意深く降りていく 誰かと出くわしたらどうしよう? そのときは…多分、手を上げて降参するしかないだろう きゃしゃな少女に鞭を持たれただけで手こずる始末なのだ 髪の毛をバカにされれば話は別だろうが 怒りにまかせてでしか制御できない破壊力になんか頼ったら 今度こそ身の破滅というやつだ それを思えば、今の自分の髪型が見る影もないことになっているのは むしろヒジョーにありがたくすらあるのかも… 「…くっそ~~」 誰とも会わないよう、祈り続けて突っ走る しかし、そういう思いは大抵むくわれないッ 仗助はギリギリのところで曲がり角の壁にひっ付いた 二人だ、二人いる 男と女の二人 男の方には見覚えがあった 赤毛の女と戦ってるとき後ろでわめいてた、なんかムカつく奴ッ 「私、スフレを作るのが得意なんですのよ」 「それは是非、食べてみたいな…」 「ホントですかッ」 「ああ…キミの瞳にウソはつかないよ、ケティ」 しかもどうやらスケコマシの真ッ最中 おサカンなことでッ!! 仗助は半分キレて眉をピクピクさせていた (てめー このヒモ野郎ぉぉー さっさとどっかに行きやがれェェ―― シエスタが追えなくなっちまうだろーがァ~~~ッ) 一方、ルイズッ 人一倍負けん気の強いこの少女 閉じこめられたまま大人しくなどしていないッ 「…どーなってるの、コレ」 「知らないわよ、あいつのヘンな力でしょ」 わめきたてまくって、なんだなんだとやってきたクラスメート達に 部屋のドアを壊してもらい、やっと出ることができた その助けてくれた一人にモンモランシーという金髪碧眼の少女がいた ルイズとはあまり仲はよくないが、まるきり他人というわけでもなかった 「ヘンな力っていうか、どう見ても魔法じゃない 完璧に壁とくっついてる…『土』? 『練金』?」 「知らないっつってんでしょッ」 怒るルイズに、モンモランシーはヤレヤレだった 「ゼロのルイズがメイジを召喚」ッ なんという倒錯ッ!! しかも「三日前」の戦いでは杖らしきものも持っていなかったのだ つまりあれは先住魔法か 召喚されたあの男も人間なのは見た目だけで エルフや吸血鬼だったりするのか? 使い魔との契約『コントラクト・サーヴァント』が成功していれば オリの中の猛獣を恐れる子供がいないように心配なかったが そこは「ゼロのルイズ」なのである 聞けば使い魔が逃げ出したという ご主人様を部屋に閉じこめてッ 崩れた建物を一瞬で修復するほどの力を持った使い魔がッ 「非常事態じゃないの…」 背筋が寒くなった 学院のド真ん中にエルフのような存在が歩き回っているなど 火薬庫に火トカゲを放たれたのと同じだ 「探すわよ、わたしの使い魔…」 「バカ言ってんじゃあないわよ 先生起こして学内全員避難だわッ」 意気込むルイズをモンモランシーはどなりつけた そんなこと、自分が指示するガラではなかったが 誰かがやらねばならないッ だがその決意も、続くルイズの行動に踏みにじられることになる 「~~~時間がないッ!! わたし行くわよ、逃げられちゃうじゃないッ」 「あっ、ルイズ、待ちなさ…」 走るルイズを追うモンモランシー その後をなんとなくついていってしまうその他数名 避難するにしても降りるしかないのだから これはある意味当然ではあったが どたどた駆け回るいくつもの足音から異変に気づく生徒が続出 彼らのうち何人かもまたドアを開け、騒動のもとを確かめようと追いかけることになるのだった なんか上が騒がしい 仗助もすぐに気がついた 向こうにいる男女も気づいたのだろう 「ひとまずこの場はお開きだ」とやっと決めてくれたようだ (ようやくか! くっそぉ~ 時間くいすぎたな 逃げ切れっかな…) 「いたッ」 「うええっ!?」 確かに時間を食いすぎた ふりむけばそこにヤツがッ 「待ちなさいルイズッ」 「いた、って、使い魔?」 「平民の使い魔? いえ、魔法を使ってたから貴族の使い魔?」 「なんだなんだ」 「何の騒ぎなんだよ、さっきから聞いてんのに」 「教えろったら」 「キュルケの新しいカレがペリッソンって本当?」 「コルベールってハゲだよな」 しかもなんかたくさん連れてる! もう考え事の段階は月までブッ飛び消滅した 助かるには走るしかないッ 「オレが何したっつーんだよォ チキショオオオオ―――ッ!!」 「な、なんだねキミはッ」 「ギーシュ様に乱暴しないでッ」 男女二人を突き飛ばして逃げる仗助だったが そのさらに向こう側の曲がり角から、また見覚えのあるヤツが… あの赤い髪、あのナイスバディーのねーちゃんはッ 「あら」 こちらに気づくと、興味シンシンといった眼で近づいてくる 仗助は無視こいて横を通り過ぎようとしたが、すこし甘い 伸びた右手から腕を組まれた ナチュラルに、ニュルッと 年齢的にも彼女イナイ歴イコール年齢である仗助は思わずドギマギするものの そんなもの、うしろからせまりくる絶体絶命の前にはふっ飛ばされてしまうッ 「は、放せッ…殴るぞ、本気だぞッ」 「なぁに? またヤるの? あたしはかまわないけど、どうせやるなら別の場所での戦いの方が」 「さわってんじゃねーわよッ」 ドボォォ 「がぶほおッ」 ドシャア 走り込みからの十八文ドロップキック ルイズの両のブーツ底が仗助に炸裂 顔面にッ!! 自分も転んでしまってはアレだということだろう 赤毛の女はアッサリ手を放していた 鼻血を出して立ち上がった仗助は、尻もちをついていたルイズと目が合った直後 …がなり合いに発展した 「てめー なんてことしやがるッ 女だと思って黙ってはいたが 温厚な仗助さんでもイイカゲン我慢の限界だぜーッ」 「勝手に逃げる使い魔がそれを言うのッ? わたしを一体、なんだと思ってんのよ」 「誘拐犯だろーがッ ここはどこだッ すぐにオレを返せッ 110番すっぞ バカヤロ―――ッ」 「バカヤローですって? いやしくも王家につらなるわたしをバカヤロー? よっぽど長生きしたくないらしーわね、このトーヘンボク」 「落ち着きなさい」 バシッ バシッ ヒートアップする仗助とルイズの頭を後ろからひっぱたいたのは赤毛の女 我に返った仗助は言われた通り落ち着くことにした ルイズも不本意ながら従うようだ 「まず、なんで逃げたのか聞かなきゃいけないトコだけど」 「ンだよ、オレにゃ言いたいことなんかナンもねーぞ」 「ま、それは後にしましょ…ほら、あそこ。 面白そうなことになってるし」 「ん?」 赤毛の女が指さした先 そこにいたのは今さっき仗助が突き飛ばした男女と、もう一人… スラリとしたパツキンの少女だった 「モ、モンモランシー どうしてここに…」 男がボーゼンとつぶやいていた 10へ
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「これがおれの本体のハンサム顔だ!」 文字通り肉壁を開け、自らの顔をさらけ出す。 そこにキュルケとタバサが魔法を放つ。 しかし、その魔法は肉に遮られる。 「『火』も『氷』も無駄なんだよッ!!俺には『弱点』はないんだよォーーッ!!偉そうなガキどもがァーーッ!」 続けてワムウがボディにパンチを叩き込む。 さすがの肉壁も耐え切れないのか、男の顔が少し歪む。 ワムウも驚く。 「ふむ、我が拳を受けて倒れないとは…面白い、実に面白い男だ!」 男は歯軋りをする。 「なめやがって…俺のこの肉は平民にも見えるし、触れもする…おめーらの一部はフーケのを見てるよなァ~~ッ! そう、これは俺の能力!メイジの特権魔法に加え!新たなる能力、それが『スタンド』! おめ~らよ~ッ…トリステイン魔法学院の生徒だってなァ~~ッ?あそこの俺は元生徒だったんだが…この俺をよぉ~~~ッ、 問題生徒だとか言って退学にしやがったところなんだよなァ~~、うるせえ上級生をバレないよう足元を俺のスタンド、 『イエローテンパランス』で固めて、ちょっとばかしい痛めつけてやっただけだってのによォ~~… それはともかく…あそこの品性方正なガキどもを俺の『イエローテンパランス』で痛めつける願いは叶いそうだなぁ~~ッ」 ワムウが先ほど男を殴った拳に肉片がついている。 「教えてやる!それにさわると左手の指にも喰らいつく…片手を食われるか両手を食われるか選びたいなら好きにしな。 嫌なら左手の指は鼻でもほじってるんだな」 ワムウの右手の肉片が嫌な音を立てて蠢く。 「右手を食らってパワーアップしてやるぜェ~~ッ!」 しかし、ワムウは動じない。 「食らうか…面白い、実に面白い…そして、我々に似ている…」 ワムウの左手に肉片が吸い込まれていく。 「食らうのに特化しているだけあって…これだけ小さい肉片すらも食い返すのに少々時間がかかる… つまり、力押しは無意味だということか…俺にとって強い戦士こそ真理、久々に楽しめそうだ… あっちのデクの棒は貴様らに任せたぞ」 そう残りに言い、風を纏いだす。 「肉の壁くらいカーズ様の輝彩滑刀ならば真っ二つだろう…名づけるならば輝彩竜巻の流法ッ!」 水蒸気を含ませ、宝石のように光を反射する鋭利な竜巻ッ! 「いいところに目をつけたけどよォ~~刃物対策はもちろんしてあるぜェ~~ッ…エアカッター相手には まともにやったら怪我だらけになるからなァ~~ッ!」 竜巻は肉の表面を切り裂くだけで、内部までにはいたらない。 「その辺の鉄くずやら木片やら不純物よォ~~肉の中に含ませておけば風の刃くらい受け止められるぜェ~~… ちょっとやそっとの肉片じゃ効かねぇしよォ~~~その馬鹿力に『万が一』があるかもしれねェ~~… ここは遠くから『ウェルダン』以上にじっくり焼いてェ~~ッ!俺のイエローテンパランスで食らってやるぜェ~~ッ!」 男は杖を振り巨大な炎の弾を放つ。 その炎の弾に魔法が着弾。爆発し、炎は消し飛ぶ。 「あっちのゴーレムとやらをやれと言ったはずだが?」 ワムウは後ろの杖を構えたルイズとワルドに向かって話す。 「フーケには因縁があるとかいって三人でやるって言って効かないのよ、第一あんたは私の使い魔でしょ? 私を守るのが任務なんだから大人しく協力しなさい」 「戦いに誇りを持っているのはわかるが、これは決闘ではなく任務だ、急がないといけない以上ぐだぐだ言ってる 暇は無い、僕も参戦させてもらうぞ」 ワムウは舌打ちする。 「あの程度の炎の弾、連射でもされない限りかわすのはわけない…そして、俺の再生力ならば一発や二発受けても 別に大したダメージにはならん、打ち消す余裕があるなら精神力を温存しておけ」 「言ってくれるなァ~~、どうやら『ウェルダン』は好みじゃないらしいなァ~~ッ!」 巨大な炎の弾が何発も現れる。 「弾幕だぜェ~~火符ってとこかァ~~ッ…速度を捨てて威力に特化した『ファイヤーボール』とくと味わいな!」 ワムウは隙間を抜け、男の前に突っ込む。 男は杖を肉の中に格納するが、ワムウは構わず殴る。 しかし、今度は男の顔は歪まない。 「あの炎の間を抜けるなら正面しかこれねェよなァ~~…正面に集中すればどんな打撃にだって俺の城は 落とせねぇぜぇ~~…ブヂュルヂュルつぶしてひきずりこみジャムにしてくれるぜェー!」 ワムウはバックステップで肉片をかわす。肉に仕込まれている金属片などで拳から血がしたたる。 「なるほど、なかなか堅牢な砦だ…さて、ここはジョセフならどうするだろうな…」 後ろに下がったところを男は火炎で狙う。 ワムウは大人しく下がり、二人のところへ戻る。 「なかなか厄介だ、少々小細工でも弄してみようと思うが…自慢の隊長殿に聞きたい、 貴殿は風のナイフと炸裂弾と破壊槌であの城を落とすならどうするかな」 ワルドは杖を振り炎の弾の軌道を逸らせながら考え込む。 「ふむ、そうだな…破壊槌で背後から陥れて、兵が出回ったところを正面突破するとするか」 * * * キュルケが化粧をしながらフーケに話し掛ける。 「奇遇ですわね、土くれのフーケさん、お世話になったので夏中見舞いでも出そうかと思ってたところで」 「あら、こちらこそ。学校はお休みなのかい?」 「いえ、数日間ミス・ロングビルの喪中休みになる予定で」 「あらそりゃおかしいね…0親等の喪中休みは無期限休業のはずだよッ!」 化粧を終えたキュルケが『ファイヤーボール』を放つのと同時にフーケのゴーレムの拳が街道の地面をえぐる。 ファイヤーボールは届かず、巨大なゴーレムに当たり、消える。 タバサは口笛を吹き、やってきたシルフィードに三人は飛び乗る。 「タバサの分以外は全部燃やしてやるわッ!」 「なあキュルケ、君、最近ガラが悪くなったなぁ……」 上昇しようとするシルフィードにフーケの石礫が飛ぶ。 シルフィードの体をひねってかわそうとするが、ギーシュに巨大な石が当たり真っ逆さまに落ちていく。 「ギーシュッ!」 キュルケが杖を振り、レビテーションで軟着陸させようとする。 「キュルケ、僕のことはいい、その杖はフーケに向けててくれ、お願いだからな」 そのまま落ちていく。 フーケはレビテーションをかけることを予想していたのか、先ほどまでギーシュがいたところに石礫が飛んでいく。 「うおおおおうッ、ワルキューレッ!」 ギーシュは地面に杖を振り、着地地点にワルキューレを出現させる。 フーケは再度そこを狙おうとするが、キュルケ達に魔法を放たれ、防御に時間を割かれ阻まれる。 ギーシュはワルキューレの腕に墜落する。かなりの高度からおちたため、多少軟化してある腕とはいえ、 かなりの痛みを伴う。 キュルケ達は心配で振り返る。 ギーシュはゴーレムの上で親指を立てた後、気を失った。 「…柄にも無い」 ぼそりとタバサが呟く。 「ええ、ギーシュの分もしっかり返してあげないとね、さてどうする?」 「空中なら離れていれば『ジャッジメント』は無意味、トライアングル2人なら勝ち目はある」 「確かに遠距離ならゴーレムに精神力を裂いてる分私たちのほうが有利だけど…埒があかないわね」 「なら開ける、急降下しながら急接近する、攻撃お願い」 シルフィードの高度を上げ、ゴーレムの真上のあたりから様子をうかがう。 フーケは急接近に警戒し、ゴーレムの腕を上げる。 「腕の隙間を抜けれそう?」 「五分五分」 「抜けるだけで五分じゃちょっと採算あわないわね、さてどうしましょうかね」 キュルケは唇に指を当て考える。 「フーケのゴーレムはギーシュのと違ってこの辺の土が詰まってて堅いし…」 そして、なにか思いつく。 「そうよ!いっぱい詰まってるからいいんじゃないの!タバサ、ゴーレムにあなたの氷の矢を突き刺せる? できるだけ深いほうがいいんだけど」 「やってみる」 シルフィードの距離を一旦離し、胴体に向かって数本の氷の矢を飛ばす。 しかし、表面を覆った鉄がそれを阻む。 「私のゴーレムの自慢はでかいだけじゃないのさ!…さあ、今なら逃げても追わないよ」 「冗談言わないで、おばさん」 タバサは長い詠唱の後、巨大な氷の矢を強力な風圧で飛ばす。 ゴーレムの胴体にそれが突き刺さる。 「なかなか強力な呪文じゃないか、でも穴の一つや二つで崩れるほど私のゴーレムはやわじゃないよ!」 フーケのゴーレムは刺さった氷の表面より外の部分を叩き折り、大きな足取りでこちらへ動き始める。 再び、シルフィードを急上昇させる。 「タバサ、勝負を決めるわよ、首尾よくね」 「了解」 シルフィードが急降下し、フーケの胴体の穴に急接近しようとする。 ゴーレムの拳をギリギリでかわす。 キュルケが穴に向かって杖を振り、タバサが遅れて杖を振る。 そしてなんとか安全な場所に離脱する。 「あら、なかなか無茶なことしたみたいだけど…なにをしたのかわからないわね」 「あら、観察眼が足りないわよ」 変わった事は穴が厚い氷でふさがれているだけであった。 「そろそろ…変化がおこるはずだから」 ゴーレムの穴を塞いだ氷の隙間から蒸気が噴出し、甲高い音をあげる。 「まさかッ!」 「そのまさかよッ!」 ゴーレムの内部に残っていた氷をキュルケの炎が溶かし、蒸発させ水蒸気に変えた。 「氷で逃げ道を一時的にも塞いだら…あとはおわかりよね?」 約1500倍に体積の増えた水蒸気は逃げ場を求める。 フーケは叫ぶ。 「うおおおッ!だが!ゴーレム崩壊は許可しないィィィィィーーーッ」 穴の付近の固定化を解き、ゴーレムの穴を自ら広げる。 「キュルケ、どうするの?」 タバサは予想内の行動であったため動揺せずに、なにか次の一手を尋ねる。 しかし、キュルケは正反対に動揺して笑っていた。 「自分から穴を開けるなんて考えて無かったわ、どうしましょう、タバサ」 後先をあまり考えない親友の言葉にタバサはため息をつく。 しかし、穴の広がるスピードが異常に遅かった。 「錬金して穴を埋めるだけなら、トライアングルにも匹敵すると僕は自負している!」 ギーシュが杖を振り、穴を再度錬金し、蓋をする。 「なんだかよくわからないけど、フーケがやるってことは止めたほうがいいみたいだね」 ボロボロのギーシュが起き上がって穴に向けて杖を向けていた。 「ギーシュ、あんたかっこいいわよ!」 シルフィードがフーケの目の前に上昇する。 「さあ、選びなさい、私たちの魔法を食らうか、それともゴーレムが崩壊したところをボコボコにされるか」 魔法は同時に二つは唱えられない。 錬金をすれば二人の攻撃を受け、迎撃すればゴーレムが崩れ落ちる。 「こ、氷の矢で攻撃するの?」 「いいえ、違うわ」 「じゃあ炎の球で攻撃するの?」 「それも違うわ」 「もしかして、両方ですかァーーッ!」 「イエス!イエス!イエス!」 「それだけはお断りだね!」 キュルケは錬金を諦め、ゴーレムの拳を振るう。 しかし、シルフィードに拳が届く前に、ゴーレムは崩れ落ちた。 大きな土ぼこりが舞い、周りの温度と湿度があがる。 その中に残っている影、フーケに全員が杖を向ける。 「再起不能くらいにはなって貰うわよ」 キュルケが魔法を放とうとしたとき、そのフーケは崩れ落ちた。 「…あの土人形?」 「逃げられた」 「まあいいさ、追い払ったのは事実だ」 三人はワルド達の所へ戻っていく。 * * * 肉壁を操る男の背後に透明なワムウが潜む。 正面からは風の刃と爆発が男を襲うが、肉の壁を越えれない。 「このままよォ~~ッ…『海をまっぷたつにさいて紅海を渡ったっつうモーゼ』のように…… おめーらの魔法を突破しておめーら全員ブヂュルブヂュル引きずりこんでジャムにしてくれるぜェ~~ッ!」 前に肉壁の盾をつくり、ゆっくりと進んでくる。 そこを潜んだワムウが攻撃しようとし、纏った水蒸気を払いのけ、腕を振り上げる。 しかし、その拳は届かなかった。 ワルドの放った風の刃が運悪くワムウに飛び、ワムウは身を守るのに一瞬時間を使うのを余儀なくされた。 「いつからいたのかしらねぇけどよォ~…もうちょこまかと避けさせやしないぜ…横も後ろも全封鎖だッ!」 縦に炎の弾を、横に広げたイエローテンパランスを。 しかし、ワムウは闘いの天才であった、 難なく大きくジャンプしてかわし、ルイズの横に立つ。 「すまない、君の姿が直前まで見えなかったから当たってしまった」 ワルドが謝るがワムウは別に気にした風もない。 「さて、どうする子爵。俺の風のプロテクターは所詮は水蒸気、一度手品を見せた以上適当に炎をばらまかれれば 軽く吹っ飛ぶ。策がもうないなら、今度は俺の話を聞いてもらおうか」 ワムウは話す。 「な…君は正気か?」 「お前の風程度で狂うほど弱くは無い」 「なんだって?スクウェアの風が弱くないだと?」 「風の流法の使い手だ、生きている風、死んでいる風くらいはわかる…貴様の風は死んでいる」 「ちょっとワムウ!なにわけのわからないこといってるの!やめなさいよ!」 「こんな侮辱は初めてだぞ、ワムウ」 険悪な雰囲気になる。 「いいだろう、君の作戦に僕たちは必要ないだろう、お手並み拝見といかせて貰おう」 ワルドはルイズを抱え、フライで飛びそこを離脱する。 「ワルド様、放してください!」 ルイズはもがき、男に魔法を放ちつづける。 ワムウはゆらめく炎の中、男に突っ込む。 「とうとう俺に食われる覚悟ができたかァ~~ッ!このタマナシヘナチンがァーーーーっ!」 「…わかったんでな」 「あ?」 ワムウは竜巻を発生させながら、男の目の前で構える。 発生させた竜巻はことごとこ男の肉の壁で打ち消される。 ワムウは左腕を関節ごと右回転させる。そして右腕もひじの関節ごと左回転! そのふたつの拳の間に生じる真空状態の圧倒的破壊空間はまさに歯車的砂嵐の小宇宙と竜巻が男の肉の壁に 当たり続ける。 「俺のスタンド相手に力押しだとォ~~ッ!てめーの力がいくら強かろーがこの『イエローテンパランス』 の前には無駄だッ!俺を倒すことはできねーし、その両手は今も俺の肉片が食らいつづけているぜ! ドゥーユゥーアンダスタンンンンドゥ!」 しかし、男のスタンドが次第にはがれ始める。 「な、なんだと…」 「わかったと言ったはずだ…」 とうとう、ほとんどの肉の壁ははがれる。 「ヒィィイイイイ~~ッ!」 ワムウは再度両腕を回転させ始める。 「闘技…神砂嵐!」 ほとんど露出した男の肉体に直撃し、男は断末魔を上げる。 男は吹っ飛び、ボロ雑巾のように地面に転がった。 「わかったのだ…策を弄するのはジョセフに任せるとしよう…俺はワムウ、風の使い魔ワムウだ」 イエローテンパランスの男…死亡 フーケ…再起可能 To be continued.
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中庭には眼鏡とキュルケがいた。勉強会でもしていたのか、眼鏡は本とノートを持っている。 「ちょっとルイズ。あなた使い魔に逃げられたらしいわね」 うわ……もう広まってるじゃないの。わたしをここから追い出そうっていう闇の勢力でもいるわけ? 「キーシュの使い魔は大活躍だったって聞いたけど。同じ平民でも随分違うものねぇ」 何よ、あんな爺さんがいいの? 見境なし! 淫乱! 色魔! 肉欲の権化! 「コントラクト・サーヴァントまでしておいて従わせることができないなんて」 あーもうやだやだ。こいつ無視無視。おっぱいおっぱいおっぱい。 「あなたらしいわ。さすがゼロのルイズ」 おっぱいおっぱいおっぱいおっぱい。 「ねえ、あなたわたしの使い魔見なかった?」 眼鏡は首を横に振った。役に立たないわね。 「そっちのあなたは見なかった?」 「見てはいねェー……だがヨォ、ラッキープレイスはルイズの部屋って感じダぜェ」 おおお、このドラゴン口をきくんだ。主に似て物言いは無礼だけど素直に凄いわ。 「……今のは腹話術」 えええええっ、そ、そっちの方がスゴイッって! ここで腹話術を出すセンスはともかくとして、意外にユーモアあるのね、この眼鏡。 「ルイズ。あなたタバサのドラゴンが見えてるの?」 「見えてるのって……見えるに決まってるじゃない!」 どこまで人を馬鹿にすれば気が済むんでしょうね、このおっぱい的存在は。 「アンタもスタンド使いになッたンだなァールイズ。ビックリだッツーの」 スゴイわねえ。唇なんて全然動いてないじゃない。この子にこんな芸があったなんて驚き。 ところでスタンド使いって何だろ? 無知を晒すみたいで恥ずかしいから聞かないけど。 あとでグェスにでも聞いてやるか。あいつ下らないこと詳しそうだし。 「いつまでそこにいるつもりだ?」 少女は伏せていた顔を上げた。話しかけられていたのかと思ったが、そうではないらしい。 普段の口調には、静かに抑えられた蔑みと上っ面以下の敬意が込められていた。 今の言葉からは、ある種の親しみが感じられた。同族への友好的感情といってもいい。けして少女には向けられることの無いものだ。 自分達以外の誰かがいる恐怖、唐突に動いた使い魔への困惑、場違いな嫉妬、それらが混化し、本人さえ理解しがたいものになり、少女は使い魔を見た。 使い魔の目は少女から逸れ、部屋の端へ向けられていた。何も無いはずの空間を凝視していた。 部屋の中には少女と使い魔しかいない。いくつかのパーツに分かれた使い魔が部屋のあちこちで蠢いている。 「顔くらい見せてもいいじゃあないか」 使い魔の口は動いていない。だが、声は聞こえる。 使い魔の声質に似ていたが、決定的に違う部分があった。 その声は空気を震わせることなく、頭の中へ直接割り込んでくる。 「私は君に従おう。君の目的は知らないが、なんとなく想像はつく。協力させてほしいだ」 口をきいているのは使い魔ではなかった。 少女はベッドから半身を起こし、悲鳴を飲み込んだ。右手で左腕を強く掴んだ。爪が食い込み、血が滲むほど力を入れた。 「主は君だ。私は従で充分だ」 使い魔の傍らに緑色の「何か」がいた。人ではない。人の形に似ていたが、絶対に人ではない。 下半身は醜く潰れ、肩や頭部からは無数の管が突き出ていた。 人形の全身にこびりついた緑色のカビが、少女の使い魔と関係があることを証明している。 目は二つあるが、人間の黒目にあたる部分は存在しない。全体が大雑把でいびつな造りをしていた。 「私には過程があればそれでいいんだ」 幻覚を見せられているのだろうか。握り締めた左腕が悲鳴を上げていたが、少女の耳には「何か」の声しか聞こえていない。 「君と戦おうとは思わん。それだけは分かってほしい」 緑色が薄れ、その声が遠くなっていく。少女はベッドから立ち上がった。この部屋にいたくない。 もつれる足で扉へ向かい、ノブに手をかけた。回そうとするが、汗で滑って上手く回せない。 「……お夜食、もらってくる……ね」 聞かれてもいない言い訳を口にした。 貴族嫌いの料理長に頭を下げるのも毎夜のことで、いまさら言葉にするようなことではなかったが、この異常な状況下、言い訳の一つも無しに部屋を出れば何をされるか分からない。 なんとかノブを捻り、扉を開け、外へ出ようとしたところで足を止めた。 少女の意思で止めたわけではない。足首に纏わりつく使い魔の指先を感じ、少女は足以外の動きも止めた。痛いほどに鼓動を速める心臓だけが、例外的に動き続けている。 「スカラファッジョ、あなた見えていましたね?」 千切れた左腕、ねじくれた右腕、胴体から生えた脊椎のような触手、どんなに気持ちが悪くとも払いのけることは許されない。 「ふむ……ふむ、ふむ」 右手で鼻をつままれ、左手に顎を押さえられた。口をこじ開けられ、使い魔が鼻を差し込んで匂いを嗅いでいる。 足が服の内側で這い回っている。そこに劣情は全く感じられず、それゆえ尚の事恐ろしい。 眼窩に指が差し込まれた。蚯蚓じみた長い中指が深く潜り、眼球の裏を撫でた。 震える足を気力で支え、倒れはしないように耐えていたが、使い魔の傍らに緑色の人形が現れた時点で少女の膝は恐怖に屈した。 緑色が腕を振り上げた。親指を内に握りこみ、それ以外の指は伸びた状態で揃えられている。 何をしようとしているのか理解したが、目を逸らすことはおろか、瞬き一つできない。 振り上げられた手が、何のてらいも無く、振り下ろされた。 見開かれた瞳から涙が一滴、それに合わせ、閉じることを忘れた口の端から唾液が糸を引いて床に落ちた。 「……違うな」 手刀が頭を割る直前で人形は消え失せた。だが、少女はへたり込んだまま動かない。 光彩を淀ませた瞳からは次々に涙が零れ落ち、口元は震えるだけで開くことも閉じることもない。 使い魔は少女に興味を失くしたのか、全ての体を元いた位置に戻し、活動を再開した。 ――スタンド使いを召喚した者にもスタンドが見えるのか? スタンド使い使い……ふん。 ――スカラファッジョか。たしか意味は……へっ、いい趣味してやがる。 どれほどだいそれた力を持っているとしても、種が割れていれば恐ろしくはない。 一瞬で壊れた物体を直そうが、光速を超えて時間を止めようが、いくらでもやりようはある。 策を練ることはけして不得意ではなかった。むしろ得意だった。 自分をより強い快楽へと導くための作戦を立てるため、じっくりと事を煮詰めるその時間は、時として実行時の愉悦を上回る。 だがそれも相手を理解していてこそだ。 仕事が終わってからの一杯をかかさない。 髪の毛をけなされればブチ切れる。 毎朝牛乳を飲んでいる。 母親が美人。 些細な情報でもかまわない。蟻の穴がきっかけで堤防が決壊することは珍しくない。 ――だが、野郎は……。 能力を尻毛の先ほども見せない。大切な物が分からない。主を人質にとも考えたが、現状を見る限り喜ばせるだけだろう。 水蒸気になって忍び寄る。雨に紛れて寝込みを襲う。闇雲に行動を起こすのは簡単だ。 だが相手の能力がこちらの意図を上回るものだったとしたら? 人間でないことは見た目で丸分かり。そんなわけの分からない生き物の体内に入っていいものなのか? 全て罠だったらどうする? 液体にさえダメージを与えるような力があったら? 何かに閉じ込める、全てを凍りつかせる、そんな能力だったら? すでに本体を認識されていたら? そのいずれか一つだけで全てが終わる。 ――しかも、このオレに気づいてやがった。 その上で気づいていることを教え、さらに余裕を崩さずこちらに呼びかけた。自分のスタンドを曝け出し、全てを明かしているポーズをとって話しかけてきた。 その態度、そして泡を食って逃げ出した自分自身に腹が立って仕方ない。 ――ケツ穴がいい気になりやがってるな。オレの前で調子に乗ってやがるな。 いい気になっているやつを許す趣味は無い。例外なく後悔させる。 近寄らずに消す手段は一つだけあった。そして、その手段はもうすぐこの学院へやってくる。 ――クヒヒッ、ヘハハハッ、フウウッヘヘヘヘ……ああ楽しみだァ。思うだけでも気分が晴れるぜェェェェ。 自分の強みは「情報」にある。下水の中、天井裏、排水溝、人が嫌がるあらゆる場所を這い回り、この学院を知ろうと努めた。 結果、表から裏までの全てが自分の中にある。部屋の中で本の表紙を眺めているだけの使い魔には手に入れられない情報を持っている。 食堂で大暴れした爺使い魔、ルイズの下着のローテーション、飽く事の無いキュルケの情事、ロングビルの裏仕事。 近いうちに開催されるであろう使い魔大品評会。 使い魔大品評会。 ――それまでは我慢してやるぜ。オレの性にゃ合わねェがよォ。 使い魔品評会は実にいい機会だ。実戦に近い模擬戦には事故がつき物。そうとくればやることは一つしかない。 一つ一つの挙措に隙が無いハゲ教師。裏で汚れ仕事をしているらしいチビ眼鏡。おかしな力でメイジを一蹴した糞爺。世界有数のメイジと噂される学院長。あとは自分以外のスタンド使いとその主人。 緑色を消し、これらの邪魔者もいなくなれば、この学院は自分の天下になる。 ここは一年ごとに新しい子供が自動供給される天国のような場所だ。誰にも譲ることはできない。 犯してやろう。切り取ってやろう。抉り出してやろう。打ち付けてやろう。ぶちまけてやろう。 中から苦痛と快楽を繰り返し与えてやろう。親友同士で楽しませてやろう。 魔法を使うのもいい。小利口な貴族連中では思いもつかないやり方を考えてやろう。 全ては使い魔大品評会だ。そこから始まる。そこから始める。 別にタバサの使い魔信じたわけじゃないけど……あ、あれ腹話術だったっけ。 別にタバサの言うこと信じたわけじゃないけど、自分の部屋に戻ってみることにした。 わたしはわたしなりに反省したけど、グェスだって反省しかもしれないしね。 部屋の中で正座して待ってるかもしれない。 ここまでポジティブに考えてるのに、渡り廊下でマリコルヌに遭遇するし。またよりによって。 ううう、普段人通りが無いところを選んで歩いてきたのに。 「……」 ん? からかわれることを覚悟してたのに、マリコルヌは元気なさげ。 いつもゼロゼロゼロしか言わない風邪ッぴきがおかしいわね。 どうしたんだろ。食堂の騒ぎが伝わってないのかな。だったらラッキー。 「どうしたのマリコルヌ。元気無いわね」 「いや……別に」 「わたしの使い魔見なかった?」 「……別に」 わたしに目を合わせず、腕にひっついた使い魔の蛙をジッと見ている。 これは怪しい。何か企んでいるようね。 どうやってわたしを陥れてやろうか、そんな雰囲気が漂ってるわ。 ふん、そっちがその気ならわたしだって受けてたってやるんだから。 「あのね。病気じゃないならもっと胸を張りなさい。人をからかってばかりいる不遜なあんたはどうしたの」 バァーンっと背中叩いてやった。マリコルヌはむせてるけど、わたしはちょっとだけスッとした。 マリコルヌは放って渡り廊下を後にする。あーあ、こんなことでしか憂さを晴らせない自分が情けない。 今のわたしって、この学院で一番不幸な女の子なんじゃないかしら。
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食堂につくまでの間ルイズは自分の使い魔についてかんがえていた。 (トリッシュはいい使い魔?だけど…なんというか…私、下にみられてるっ!?って感じがするのよねぇ~! 考えてみれば昨日の夜から情け無い姿しか見せて無いし…もっとご主人様らしく威厳を示すべきよね?うん、決めた!もっとご主人様らしくしなきゃ!) 食堂に着くとテーブルには豪華絢爛な料理が並んでいた。 (フランス料理のフルコース…朝っぱらから?…うっ) トリッシュはみているだけで気持ち悪くなった。朝からこんな重たい料理を食べる何て…正気か?というのがトリッシュの偽らざる気持ちだ。みているだけで胸焼けしてきそうだ。 「ここにあるのは貴族のための料理。使い魔のための料理はこっちよ」 ルイズが指差した先にはスープとパンが二切れのった飾りの無い貧相な皿がある。 「そう、わかったわ」 「しょうがないわね、そんなに言うなら…っていいの!それで!?」 「かまわないわ」 トリッシュは短く答えると、ルイズの隣の席に座ろうとする。 (え~?いいの!?なんで?そんなものじゃそこらの平民だって満足しないものじゃないの!?っていうか折角ご主人様が特別に私の分を分けてあげようとしているのに…! 察しなさいよ!……ばかっ!) ルイズは当初の予定が狂って少し混乱したがトリッシュがいすに座っているのを見てにや~っと口角を吊り上げて何かたくらんでる悪い顔をした。 「トリッシュ…ここは貴族の食卓なのよ!そのいすには貴族しか座ってはいけないのよ!…でも、しょうがないわね、私が頼んで特別に……」 「そう、わかったわ。じゃあ私は外で食べることにするわ」 「…て、外で食べるの!?」 「ええ、だめかしら?」 「え?いや、だめってことは無いけど…」 「なら、外で食べてくるわ。食べ終わったら食堂の前で待っているわ」 「え?あ、うん。わかった」 トリッシュはさっさと皿を持って食堂を後にした。 ルイズはただ呆然とトリッシュを見送った。 教室に入ると生徒達はトリッシュを連れたルイズをみてくすくす笑っている。 ルイズは不機嫌そうに席に腰かけ、トリッシュもその隣に座った。 (ここは、貴族専用よ!でも、特別に座らせてあげるわ!って言ったらトリッシュはどっかいっちゃいそうね…) ルイズは何とかご主人様としての威厳をトリッシュに見せたいと思っていた。 中年の女性が入ってきて授業が始まった。 「皆さん、春の使い魔召喚は大成功のようですね。 このシュヴルーズ、こうやって春の新学期にさまざまな使い魔を見るのを楽しみにしてますのよ」 シュヴルーズは教室を見渡しやがてルイズの隣に座るトリッシュに目を向けた。 「おやおや、また変わった使い魔を召喚したようですね、ミス・ヴァリエール」 シュヴルーズがそういうと教室はどっと笑いに包まれ生徒達はルイズを馬鹿にしだした。 「ルイズ!使い魔を召喚できないからって平民を連れてくることは無いだろ!」 「ゼロのルイズ!サモンサーヴァントもまともにできないなんて!さすがはゼロ!」 トリッシュは無言でスパイス・ガールをだした。 「ルイズ、こいつら黙らせましょうか?」 「いいのよ、いわせたい奴らには言わせとけば」 ルイズは首を横に振る。 (ルイズが黙っているのに、私が切れるわけにはいかないわね) トリッシュも黙っていることにした。 ただ、いま馬鹿にした奴らの顔を覚えておくことにはしたが。 授業が始まり中年のメイジは土系統のすばらしさについて恍惚とした表情で語っている。 生徒達は少し引いてた。 トリッシュは机に肘を突いてそれを聞いているのかいないのかわからないような顔をしている。 ルイズは横に座るトリッシュを見つめていた。 (考えてみれば…私はトリッシュについて何も知らないのよね…どんな奴なのかも、どこから来たのかも。 なにより、トリッシュが従えている『使い魔』、スパイス・ガールについても…トリッシュはあれはスタンドだって言ってたけど、スタンドってなにかしら? 確か、精神がどうのこうの言ってたような…今度ちゃんと聞かなきゃ!) ルイズはそれにしてもと思う。 (さっきの私は結構ご主人様としていいかんじだったんじゃ~ないかしら? 馬鹿にされてもきれることなく受け流した私!大人の対応って奴かしら!) にやにやしながらトリッシュをみるルイズ。なかなか不気味だった。 「ミス・ヴァリエール!使い魔が気になるのはわかりますが授業には集中してください! そうですね、ミス・ヴァリエールあなたにやってもらいましょう」 やってもらう?ルイズはまったく聞いていなかったためなにをすればいいのかわからない。 しかし教室の生徒達の間には戦慄が走る。 「やめといたほうが…」 「危険」 「ルイズの爆発はマリコルヌの体を除けて通る…ルイズの爆発はマリコルヌの体を除けて通る…」 生徒達の中には逃げ出そうとするもの、机の下に隠れるもの、ぶつぶつと壊れたラジオのように祈りをささげる奴までいる。 「な…なんですか!?あなた達は!?ミス・ヴァリエールの錬金が何だって言うのです!?ミス・ヴァリエール。 周りの声など気にせずやってごらんなさい」 「ルイズ、お願い…やめて」 キュルケは悲痛な顔をしながら言った。 しかし、ルイズは立ち上がり教壇に向かった。 (ちゃ~んす!これで成功すればきっとトリッシュはもっと私を見直すはずよ! 大丈夫、召喚の儀式も成功?したし!) ルイズはなんか今日はできそうな気がする…と根拠の無い自信を発揮した。 それは、ルイズは知らないがドラゴンボールを読んだ少年達が「なんか今日は出そうな気がする…」とかめはめ波を出そうとする気持ちに似ていた。 全国で1億人くらいはやったんじゃないだろうか? 果たしてどうなったか。 教室にルイズのかめはめ波が炸裂した。いや、ちがった。ルイズの『錬金』が炸裂した。 ルイズの目の前に置かれた小石はおよそ同量の火薬でもありえないくらいの爆発がおきた。 「だからルイズにやらせるなっていったのに!」 「もう二度とルイズとおんなじ教室には入らねぇー」 「メディック!メディーック!」 教室はちょっとした阿鼻叫喚の渦だった。 そんな中渦中のルイズはけほっとかわいらしいせきをしてから言った。 「ちょっと失敗したみたいね」 「「「ちょっとじゃねーだろ!!」」」 まるでコントだった。
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ゼロの番鳥-1 ゼロの番鳥-2 ゼロの番鳥-3 ゼロの番鳥-4 ゼロの番鳥-5 ゼロの番鳥-6 ゼロの番鳥-7 ゼロの番鳥-8 ゼロの番鳥-9 ゼロの番鳥-10 ゼロの番鳥-11 ゼロの番鳥-12 ゼロの番鳥-13 ゼロの番鳥-14 ゼロの番鳥-15 ゼロの番鳥外伝 「ルイズ最強伝説」
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レコン・キスタ。 アルビオン王国を中心に起こっている宮廷革命運動の中心組織。 そのアジトの一室に一人の男がいた。 名前はジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。 これはアルビオン王国が滅んだ戦いでの、彼の行動の記録である。 「入るよ」 ノックの音と共にフーケが入ってきた。 ワルドは振り向くことなく話す。 「何の用だ?」 「そろそろ出撃だから呼んで来いってさ。まったく、何で私が使い走りなんて…」 フーケが文句を言うがワルドは無視して作業を続ける。 「何をやってるんだい?」 「…仮面を作っているんだ」 「もう持ってるだろう?」 「いや、本体が付けるヤツだ。目印になる物が有った方がやりやすい、と言われてな」 今回のワルドの任務は戦闘ではない、手紙の奪取だ。 故に偏在を戦闘する者と奪取するに分け、味方への目印にする。 その際に戦闘する者の仮面を着けている場合は援護攻撃に、 奪取する者の仮面を着けている場合は防御に、 そのように分けた方がやりやすいのではないか、という意見が出たのだ。分かりやすく言うとサッカーでキーパーだけユニフォームの色が違うのと同じような理由だ。 あまり意味が無さそうだとは思ったが『あまり手間ではなさそうなのでとりあえずやっておいてくれ』と上官に言われてはやるしかない。 だが一つ問題が発生した。 最初は渋々と作っていたのだが、だんだんワルドはそれが楽しいと思ってきた。 よって机の上には15種類の仮面が並んでいた。 「どれが良いと思う?」 「私に聞くな」 制作No.07 正方形の下に逆三角形を付けた様な形の白い仮面。 目の所は大きな黒い丸で、口は赤い色で形は上が無い半円形。 結局ワルドはこの仮面を選んだ。 「決め台詞も考えてある」 「それはいいから早く行きな」 しかしワルドは仮面を着け、ポーズをとった。どうあっても決め台詞を見せたいらしい。 「いろどりましょう食卓を みんなで防ごうつまみ食い 常温保存で愛を包み込む カレーなるレターハンター 快盗ワルドただいま参上!!」 「はいはい、凄いね」 フーケはもうコメントする気もないらしい。 「だろ?だろ?」 さっさと行けよ。 そして目的の城が見える場所まで移動する。敵はパーティー中らしい、奇襲には好都合だ。 「ユビキタス・デル・ウィンデ……」 偏在の魔法を唱える。この魔法は唱えたものの分身を作り出す魔法だ。 ワルドが作れるのは最大で四人。自分を合わせて五人で戦うのが普段の使い方だが今回は違う。 分身四人を囮にして、その隙に本体が手紙を盗んでくる作戦だ。 敵の真ん中に突っ込むのに本体も行っては危険だ。だから分身で騒ぎを起こし、混乱させる。 盗みに行くのはワルドでなくても良いのだがワルドなら分身の状態を把握できる為、逃げやすい。 分身四体が仮面を付け、突入した。 分身を突撃させ、ころあいを見計らって本体はルイズの部屋にフライで回りこみ潜入する。 「ふっふ~ん。潜入完了♪」 鼻歌を歌いながらルイズの部屋に入っていた。 「まずは鞄からだな」 鞄を漁る。そして封筒を見つけた。 「これだな。アルビオンの封筒だし間違いない!」 意気揚々と手紙を懐にしまい、再び漁り始めた。 「他には何かないかな~♪むむっ!これは!」 何か見つけたのか? 「ルイズのパンツだ!ラッキー!」 ラッキー、じゃねえだろ! 「これを好きにしていいんだよな?俺ロリコンだし問題ないよな?」 認めた。ロリコンって自分で認めたよコイツ。 「被ったり、舐めたり、何をしても良いんだよな!?」 そのまま何をしようかしばらく考えるロリコン仮面。 だがしかし…ロリコンは偏在の全滅を感じた。 「うん?偏在が全滅したか、仕方ない名残惜しいが引き上げよう」 窓から帰っていくロリコン。 イギーが来た時、そこは『かなり無残に』荒らされていた。 フライで飛びながらロリコンは考える。 「うーん。やっぱりパンツは持ってきた方が良かったかな?」 何を考えているんだお前は。 「やっぱり取りに行こう!」 そしてUターン。 だが城は火に包まれていた。 「あれ?城が燃えてる?」 燃えてるね。 「パンツも燃えちゃう!」 そういって全速力で城に戻るロリコン。 そして城の屋根に着地し、ルイズの部屋の場所を思い出す。 「えーと、えーと、どこだっけ?」 迷い続けてやっと思い出した時、 城で爆発が起きた。 「うわわわわわわわわ!」 爆発に巻き込まれはしなかったが、今の爆発で火の手が強くなり、このまま取りにいったら命が危ない。 彼は命かパンツかの二択に迫られた。 「パンツに決まってる!とう!」 華麗にルイズの部屋に飛び込む。 だがそこには何も無かった。 「部屋を間違えたか…」 だな。 そして出ようとして足を滑らせ、ころんで頭を打って気絶した。 次に目が覚めたときはベッドの上だった。 「おお、ワルド子爵。目が覚めたかね」 声をかけてきたのはレコン・キスタの総司令官クロムウェルだった。 「ここは…?」 「我々のアジトだ。だが安心したまえ、戦いには勝った」 「そうでしたか…」 どうやらあの後死なずに済み、仲間によって運ばれたらしい。 「して…目的の手紙は?」 ロリコンは懐から封筒を出し、クロムウェルに手渡す。 クロムウェルは封筒を開け、中の物を読み始めた。 だが、その表情が次第に曇っていき、一応最後まで読んだ後にロリコンに声をかけた。 「これは、目的の手紙ではないようだが?」 「え?うそ?」 敬語を使えよ。 ロリコンも封筒の中身を読む。 だがそれはアンリエッタがウェールズにあてた手紙ではなく、アルビオンにあるレストランの食事券だった。 「…今度食べに行きます?」 「あ、良いね、行こう」
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結論から言うと私は外で食事をさせられた。周りには他の生徒の使い魔がいる。 外に出された理由は私が食事中に吐いたからだ。初めての食事を胃が受け付けなかったらしい。 ルイズはすぐさま私を外に追い出した。その後。何とか我慢して食事を食べる。パンも流動食だと言えるほど噛んで食べれば吐くほどではない。が、やはり体の中に違和感があるのは禁じえない。これからは人間が何をしなければいけないか考えなくてはいけないな。 いつまでも幽霊の常識じゃいけないってことだ。 食事が終わる頃生徒たちが食堂から出てくる。私の方をみて笑う生徒もいる。さっきのことだろう。 そう思っているとルイズが出てきた。 「あんた何してんのよ!恥かいちゃったじゃない!」 会った瞬間怒鳴ってくる。 「調子が悪かったんだ」 当たり障りのないことを言う。食事をしたことがないと言ったら二度と食事させてもらえなくなるだろうな。 「あんたの体調なんて聞いてないわ!罰として昼食抜きね!」 まぁ昼食だけならさして問題はないだろう。 そして教室へ向かう。ルイズと私が教室へ入ると既にいた生徒が一斉にこちらを見る。 そしてクスクス笑い始めるた。特に気にするようなことではない。 教室を見回す。石で出来た大学の講義室みたいだな。 生徒を見るとやはり使い魔を連れている。 フクロウ、ヘビ、カラス、猫、目玉、六本足のトカゲ、蛸人魚etc、、、 ルイズが席に座る。私も席に座り帽子を取る。ルイズが睨んでくるが無視する。どうせ私は床に座れとか言うのだろう。 ルイズが何か言おうとする前に扉が開き中年の女性が入ってきた。ローブは紫色で帽子を被っている。きっと彼女が先生なのだろう。 彼女が春の使い魔召還の祝辞を述べる。先生はシュヴルーズというらしい。 「おやおや。変わった使い魔を召還したものですね。ミス・ヴァリエール」 シュヴルーズは私を見てとぼけた声で言う。教室が笑いに包まれる。 ルイズは俯いている。シュヴルーズは笑いを取るために言った冗談なのだろうがルイズが傷つくのは考慮に入れてないようだ。 「ゼロのルイズ!召還できないからって、その辺歩いてた平民を連れてくるなよ!」 誰かがそう言う。するとルイズが立ち上がり怒鳴り返す。 そこから言い争いが始まる。また『ゼロのルイズ』だ。どうやら誹謗中傷の類らしいな。 シュヴルーズが杖を振ると、言い争っていた二人は席に座り静かになった。魔法は便利だな。 シュヴルーズが二人を叱る。 「ミセス・シュヴルーズ。僕のかぜっぴきはただの中傷ですが、ルイズのゼロは事実です」 マリコルヌと呼ばれていた彼ががそう言うと笑いが漏れる。 シュヴルーズがまた杖を振ると笑っていた生徒の口に赤土の粘土が張り付いた。 「あなたたちは、その格好で授業を受けなさい」 シュヴルーズは厳しい顔でそういった。 しかし発端を作ったのはお前だろう。 「では授業を始めます」 話しを聴く限りだとこの世界では魔法が科学技術らしい。ゆえにそれを使える貴族が権力を持つということか。 いや、魔法が使えるから貴族か…… こいつらが魔法が使えなくなったらどうするんだろうかね? シュヴルーズが杖を振ると石が光る。光が治まると石は金属に変わっていた。 つくづく魔法は何でもありらしい。 6へ
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相手の船が貨物船に近接し、相手の船員が乗り込んでくる。 「空賊だ!抵抗するな!…おや、貴族の客まで乗せてるのか」 ルイズたちを下品に舐めるように見る。 「こりゃあ別嬪だ、どうだい、俺らの船で皿洗いでもやらねえか?」 男は下品に笑う。 「下がりなさい、下郎」 「驚いた、下郎ときたもんだ!」 男は大きくのけぞって笑う。 「おいてめえら、こいつらも運びな、身代金もたんまり貰えるだろうさ」 数人の男が無言で武器を奪い取り、船倉に押し込まれる。 「やれやれ、空賊に襲われるとはついてないな」 ワルドが呟く。 貨物船の船員たちと一緒に狭い部屋に詰め込まれた一行。 「急いでるのに…」 貨物船の船長がガハハと笑う。 「おい、娘ちゃんたち、あんたらも急ぎなのかい?」 「ええ、そうよ」 「だとよ、野郎ども。このバカな空賊どもは俺らの船に乗り込んだつもりらしいが…」 船長は口の中から工具を吐き出し、右手の義手を器用に外す。その義手の中から拳銃が出てくる。 「俺らをわざわざ案内して乗り込まれたってことを教えてやろうじゃねーか!」 船員が歓声をあげる。 一行はポカンと口をあける。 ダービーはトランプをいじって、特に興味は示していない。 船員が工具を受け取り、扉の鍵をこじ開けようとすると、ワムウが横に立ち、扉を蹴り飛ばす。 「な、貴様ら何を…」 ワムウが頭部に一撃を加え、見張りの男二人は一瞬で床に沈む。 「兄さんもやるねえ!」 船員が笑い、倒れた見張りの男の道具を拾い上げる。 「野郎ども!まずは武器庫を襲うぞ!この型の軍船ならおそらく甲板の直下部あたりにあるはずだ!」 船長が船員を率いて、走り出す。 ワムウたちもそれに続く。 「脱走だァーーッ!奴らの脱走だ!」 脱走に気づいた空賊員が叫び、直後に船長に撃たれる。 走りながらワムウが船長に尋ねる。 「船長室はどこだ?」 「なんでそんなこと尋ねるんでい、お兄さん?たぶんそこの階段をあがって大広間を片っ端から探せば見つかると思うが」 「頭を潰してくるのが手っ取り早いだろう」 ワムウは進路を変え、階段を上がっていく。 「ちょ、ちょっと待ちなさいよワムウッ!」 ルイズが追いかけようとするがワルドが制する。 「君は杖も無い、足手まといになるだけだ。彼なら空賊くらい敵じゃあないはずだ」 ワルドはスピードを元に戻し、ルイズの手を引きながら船長を追いかける。 船員は武器庫とプレートのある部屋の扉を蹴破る。 中に居る空賊は驚いて銃を向けるが、その引き金を引くよりも早く銃弾が空賊の肩を貫く。 「野郎ども、杖と武器を片っ端から集めろ!」 船長は銃で撃たれた空賊の襟首をつかみ、拘束しようとして相手の顔をまじまじとみる。 「お、おめー…アルビオンの兵士になったんじゃねーのか!シャチ!」 「…ってことは…貴方たちは王党派なのね?」 船長の息子であったその兵士は空賊に扮した王党派だということを話し、彼らは一息つく。 が、ルイズだけは一息をつけなかった。 わなわなと震え、その兵士に詰め寄る。 「あの筋肉バカを止めてこないとッ!船長室はどこなの!?」 「え、えっとここが地下ですから…階段を二つあがったフロアの奥に居るはずです」 「わかったわ、ありがとうね!」 ルイズは感謝の言葉もそこそこに、杖をひっつかんで部屋から駆け出す。 ルイズは船長室に行くまでにかなりの人間に会うことになり、一々説明することになると思ったのだがそんなことはなかった。 通路の兵士は倒れ、武器を折られ、呻き声を漏らし、積み上げられていた。 「何なんだあいつは…」 「助けてくれ…助けてくれ…化け物だ、畜生…」 「ザミエル…ザミエル…ザミエル…」 「落ち着いて素数を数えるんだ…」 日ごろの『教育』の成果かどうかはわからないが、とりあえず死者は見当たらなかった。 もっとも、ルイズはワムウが相手を見当たらないようにできることなどは百も承知であった。 おそらく船長室の真下に来たであろう、船の上からは叫び声が聞こえ、床が何度もきしむ。 「しょうがないわね、弁償代はワムウ持ちよ!」 ルイズは上に杖を振り上げ、船の天井を吹っ飛ばす。 いきなり大穴が空き驚いたのか、ワムウが上から覗き込んでくる。 「どうした、ルイズ」 「どうしたもこうしたもないわよ!その人たちは敵じゃないからやめなさい!」 ルイズの心からの叫びであった。 「ハハハ、間一髪助かったよ」 アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーは、気にしなかったように笑う。 「彼があと10人アルビオンにいたら、貴族派に負けていたことはなかっただろうね」 「ほ、本当にすみませんでした!」 ルイズが平謝りする。 「ほら、ワムウあんたも謝るのよ!」 「いや、いいんだ、試すためとはいえ、空賊などと名乗ったんだから反撃されるのは当然だ。 あの戦い振りは驚嘆に値するよ、君の使い魔だけでなく、君の父上もね」 皇太子は近衛兵であったシャチに声をかける。 「ま、誠にすみません!」 若い兵士は地面に手をつける。 「いいといっているんだ、それより君の傷は大丈夫かね?」 「はっ!数日のうちには完治すると思います!」 「そうか、では大事にな」 「失礼しました」 彼を見送った後、ウェールズはこちらに目を向ける。 「それで、トリステイン大使殿はどういったご用件かね?」 「アンリエッタ姫殿下より、密書を言付かって参りました」 ワルドが頭を下げる。 「ふむ、それで君たちは?」 「僕はトリステイン王国魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵と申します。そしてこちらが 姫殿下より大使の大任をおおせつかった、ラ・ヴァリエール嬢とその使い魔、そして友人たちです」 「なるほど、してその密書とやらは?」 ルイズはポケットの裏側を切り裂き、縫いこんだ密書を取り出し、一礼してウェールズ皇太子に渡す。 皇太子は真剣な面持ちで手紙を読み進め、途中で顔を上げる。 「姫は結婚するのか?あの、愛らしいアンリエッタが。私の可愛い…従妹は」 ワルドが無言で頭を下げ肯定する。 皇太子は最後の一行まで丹念に読み終えると、こちらに微笑んだ。 「了解した。姫はある手紙を返して欲しいということなのだな、そのようにしよう。 しかしながら、今その手紙はニューカッスルの城にあるのだ。多少面倒だが、ニューカッスル城までご足労願いたい。 シャチ、『イーグル』号の案内を頼む」 『イーグル』号は大きく迂回し雲の中を慎重に抜けていく。 ウェールズは向かうべき城の正面から砲撃を行う巨大な船を忌々しげに見つめる。 「あれが貴族派の艦?」 ルイズはシャチに尋ねる。 「ええ、かつての我々のアルビオンズ第一艦隊旗艦、『ロイヤル・ソヴリン』号です。 もっとも、奴らは我々を最初に破った地、『レキシントン』号と呼んでいますがね」 「そう、あの艦の反乱から全てが始まった、我々にとっては悪夢のような艦さ。『レヴァイアサン』号も 『ドレッドノート』号も奪われ、『ヴィクトリー』号は大破。残った船はこの『イーグル』号だけさ」 ウェールズ皇太子が話に割り込んできた。 「この『イーグル』号ではあの艦と殴り合いなどはとうてい不可能さ、だからこうして空賊に扮してこそこそと 通商破壊をするしかなかった。もっとも焼け石に水だがね。だからこうして雲中を通り、 大陸下からニューカッスルに近づく。そこに我々しか知らない隠し港があるわけだ」 艦はアルビオン大陸の下に入り込み、光がささなくなる。 シャチによれば薄々大陸の下に我々の隠し港があることは気づいているということだが、 視界もない大陸の下で座礁や衝突、同士討ちや奇襲の危険を犯すことを考えているのか、 それともこの程度の艦が一隻あったところでどうということはないと考えているのか、あるいはその両方か。 兎にも角にも、この隠し港だけは攻撃を受けていないということであった。 暫くの航海の後、真上に直径三百メイルほどの穴が空いている場所にでる。 「一時停止」 「一時停止、アイ・サー」 「3ノントで上昇」 「3ノントで上昇、アイ・サー」 ほぼ同じ速度でアルビオン兵士が乗り込んでいる貨物船も追従する。 「まるで空賊ですな、殿下」 「まさに空賊なのだよ、子爵」 岸壁に接岸した艦からルイズ達は降りると、背の高い年老いたメイジが近づいてくる。 「ほほ、これはまた、大した成果ですな。殿下」 「喜べ、パリー。硫黄だ、硫黄!」 ウェールズの言葉に集まった兵士が歓声をあげる。 「おお、硫黄ですと!これで我々の名誉も守れるというものですな! 先の陛下よりお仕して六十年、こんな嬉しい日はありませぬぞ、殿下!」 泣き崩れならが笑う臣下にウェールズも応じて笑う。 「ああ、これで王家の誇りを叛徒どもに示しつつ、名誉の敗北をすることができるだろう」 「栄光ある敗北ですな、この老骨、久々に武者震いをいたしますぞ。して、ご報告なのですがその叛徒どもは 明日の正午に城攻めを開始するとの旨伝えてきました。殿下が間に合ってよかったですわい」 「そうか、間一髪とはこのことだな!」 一しきり笑いあったあと、パリーは一行に顔を向ける。 「して、その方たちは?」 「トリステインからの大使達だ。重要な用件で、王国にお見えになられたのだ」 パリーはなるほどといった顔つきで頷き、こちらに微笑む。 「これはこれは大使殿、私めは殿下の侍従を仰せつかっておりますパリーでございます。 遠路はるばるようこそ、このアルビオン王国へ。この有様で大したもてなしはできませぬが、 今夜ささやかな祝宴が催されますゆえ、ぜひとも出席くださいませ」 こうして、老メイジは頭を下げ、去っていった。 「では、ついて来たまえ、僕の部屋に案内しよう」 To be continued.